力と力のモーメント

力のモーメントとは

はじめに

構造力学の授業を行っていると、

「力のモーメントってなんで必要なんですか?」

とよく質問を受けます。これは、大きさがある物体が動かないことを考えるとき必要になります。その辺の詳細は別記事に譲るとして、ここでは力のモーメントの定義について説明します。
もともと物理学での定義が正式なためわかりにくいです。結果だけ覚えておけばいいかもしれません。

まとめ

力のモーメントとは本来3次元空間でのベクトルの外積から求まります。
建築構造力学ではそれを2次元で扱います。
すると、力のモーメントは、紙面に垂直な軸に対する力の回転の効果を表すことになります。

  • 大きさは、
    力のモーメントを考える点から力までの垂直距離×力の大きさ
  • 向きは、
    時計回りを正(+)、反時計回りを負(-)とします。

物理学的な定義より、力が同じ平面内にある時に限って、特定点に関する力のモーメントの合成は、大きさの加減算のみで可能になります。

ベクトルのモーメント

力のモーメントトを定義する前に、ベクトルのモーメントを定義します。右手系の3次元座標を考えます。

ベクトルのモーメント

原点をO、
座標上のある点Rの位置ベクトルを\(\boldsymbol{r} \)、
R点に働くベクトル(この時点では何を表すか決まっていない)を\(\boldsymbol{A} \)とします。右手系って何?って人はググってみてください。

このとき、原点O周りのベクトルのモーメント\( \boldsymbol{M} \)(これもベクトル)を次のように定義します。

\[ \boldsymbol{M} = \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{ A} \]

ここで、\( \times \)は掛け算ではなくて、ベクトルの外積を表します。外積って何?って人はググってください。続きに結論だけ書きます。

例えば、ベクトル\( \boldsymbol{r} \)の成分を、\( \left( \begin{array}{r} r_x \\ r_y \\ r_z \end{array}\right) \)という風に書けば、ベクトルの外積で表されるベクトルのモーメント\( \boldsymbol{M} \)は以下のように書けます。

\[ \boldsymbol{M}=\left( \begin{array}{M} r_y A_z – r_z A_y \\ r_z A_x – r_x A_z \\ r_x A_y – r_y A_x \end{array} \right)   \]

外積の図形的な意味としては、\( \boldsymbol{r}、\boldsymbol{F} \)を始点が同じになるように移動したとき、

  • 外積ベクトルの大きさは、ベクトル\( \boldsymbol{r}、\boldsymbol{F} \)が作る平行四辺形の面積の大きさを表し、両ベクトルのなす角を\( \theta \)と置けば \( |\boldsymbol{r}| |\boldsymbol{F}| \sin \theta \)で表されます。
  • 外積ベクトルの向きは、ベクトル\( \boldsymbol{r}、\boldsymbol{F} \)に垂直で、ベクトル\( \boldsymbol{r} \)から、ベクトル\( \boldsymbol{F} \)に向かって右ねじを回したときに進む方向になります。

ベクトルの外積のイメージを以下に示します。

外積のイメージ

ベクトルのモーメントを利用したものとして、物理の力学では、力のモーメント、角運動量(運動量のモーメントがその定義)などがあります。物理の他の分野でも「なんとかモーメント」があるようですが、私にはまったくわかりません。

力のモーメント

ベクトルのモーメントの定義から、力のモーメントを求めます。
右手系の三次元座標で、力のベクトル\( \boldsymbol{F} \)が作用する位置ベクトルを\( \boldsymbol{r} \)とすれば、力のモーメントを表すベクトル\( \boldsymbol{M} \)は次のように書けます。

\[ \boldsymbol{M}= \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F}=\left( \begin{array}{M} r_y F_z – r_z F_y \\ r_z F_x – r_x F_z \\ r_x F_y – r_y F_x \end{array} \right) \tag{1} \]

となります。

定義はわかったけど、力のモーメントって何なの

力のモーメントの定義は上述のようになりますが、

「力のモーメントって何なの?」

ということになります。簡単に書けば、

「力がモノを回転させる効果」

になります。

その定義からベクトル量なので力と同じように扱えます。外積の定義から考えると、複数の力が同じ平面内にあれば、特定点に関する力のモーメントは、加算・減算が数値の加減算のみで可能です。

力のモーメントは大きさを持ったモノを考えるときに必要になってきます。

建築構造力学における力のモーメント

二次元での力のモーメントの定義

建築構造力学は、二次元の紙に書いて検討することが多いです。普通はx-y平面で考えますよね。ということは、(1)式において、z方向成分が0になったと考えればいいことになるので、以下のように書けます。

\[ \boldsymbol{M}=\left( \begin{array}{M} r_y \cdot 0 – 0 \cdot F_y \\ 0 \cdot F_x – r_x \cdot 0 \\ r_x F_y – r_y F_x \end{array} \right) \tag{2} \]

したがって、z方向成分しか持たないベクトル量となります。先述した通り力のモーメントは、力がモノを回転させる効果だから、建築構造力学で扱う力のモーメトは

x-y平面と垂直なz軸に対する回転の効果

を表すものになります。

力のモーメントの大きさ

外積の図形的な意味より、二次元での力のモーメントを図示すると下図のようになります。

二次元の力のモーメント

力が働く点の位置ベクトル\( \boldsymbol{r} \)、働く力ベクトルを\( \boldsymbol{F} \)、なす角\( \theta \)としています。

そのため、図形的な解釈から力のモーメントの大きさは、

力のモーメントを考える点から力までの垂直距離×力の大きさ

になります。建築構造力学では、時計回りを正(+)の方向としています。

どうして時計回りが力のモーメントの正の方向か

力のモーメントは回転を表すため、その回転が時計回りか反時計回りかを確認する必要があります。

建築構造力学では、時計回りが正です。
同じような内容で、機械工学を中心として学んでいる「材料力学」では、反時計回りが正です。

なぜ、分野によって力のモーメントの正方向の回転の向きが違うのでしょうか?

昔読んだ本(確か、マトリックス法による 構造解析、すでに絶版)の記憶だと、

第一軸から第二軸に回転する方向を力のモーメントの正方向

と定めるためだそうです。第一軸は材料を表す軸、第二軸は材料に生じる物理量(応力、たわみ等)を表示する軸です。

力のモーメントの回転方向
  • 建築構造力学では、第一軸は水平、第二軸は鉛直下向きです。そのため力のモーメントの正方向は時計回り。
  • 材料力学では、第一軸は水平、第二軸は鉛直上向きです。そのため力のモーメントの正方向は反時計回りになります。

力のモーメントとトルクの違い

力のモーメントとトルクはともに同じ物理量(力×距離 例えば、N・m)で表されます。違いは何でしょうか?
物理的な違いは私にはわかりません。すいません。

ただ、建築に関する各種基準書を読んでいると、ボルトなど回転する中心が明確に決まっている場合は「トルク」を使用し、そうでない場合は「力のモーメント」を使用している感じがします。

正解をご存じの方、ぜひご教示ください。

終わりに

ベクトルのモーメントから力のモーメントを導きました。元々は、3次元空間での概念です。
建築構造力学では二次元で考えることが多いので、力のモーメントは材軸と垂直方向の回転を表すことを忘れがちです。

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