はじめに
ここでは、分布荷重の作用位置を求めます。バリニオンの定理と微分積分の知識が必要です。導出過程を理解できない方は飛ばしてください。ただ、結果だけは覚えてください。

まとめ
分布荷重の合力は分布荷重を図として描いたときに、図の面積が合力の大きさを表し、作用位置は図心になります。
分布荷重の合力の大きさと作用位置の証明
等分布荷重
図1のような等分布荷重wが作用しているとします。分布荷重の合力の大きさと向きは、平行で同じ向きの力の合成を利用することになります。力が鉛直下向きの時を+とすると、その合力は、等分布荷重を区間全体で足し合せればよいから次のようになります。
\[ \displaystyle \int_{0}^{l} w dx = \left[ wx \right]_0^l = wl \tag{1} \]
となります。
等分布荷重wによるO点に関する力のモーメントの合計は、荷重の大きさにO点からの距離を掛けたものを区間全体で足し合わせればよいから次のようになります。
\[ \displaystyle \int_{0}^{l} -wx dx = \left[ -\frac{wx^2}{2} \right]_0^l = -\frac{wl^2}{2} \tag{2} \]
等分布荷重の合力が作用する位置を、O点からL離れた位置と仮定すれば、バリニオンの定理より
\[ -wlL=-\frac{wl^2}{2} \]
となるから
\[ L= \frac{l}{2} \tag{3} \]
となります。等分布荷重の合力と作用位置は、等分布荷重全体を図形(長方形)としてみたとき、荷重の合力は(1)式より長方形の面積、作用位置は(3)式より図心となります。
ここで、図心とは図の中心です。中学校では重心と習ったかもしれませんが、建築構造力学では「図心」と呼びます。
等変分布荷重
図3のような等辺分布荷重が作用しているとします。荷重の最小値は0、最大値はwで直線的に変化する荷重です。力が鉛直下向きの時を+とすると、その合力は、等変分布荷重を区間全体で足し合せればよいことになりますが、荷重の大きさが位置によって変化します。x=0で荷重が0、x=lで荷重がwの直線状荷重は \( \frac{w}{l}x \) と表せるから、合力Wは次のように求めることができます。
\[ \displaystyle \int_{0}^{l} \frac{w}{l} x dx = \frac{w}{l} \left[ \frac{x^2}{2} \right]_0^l = \frac{wl}{2} \tag{4} \]
等変分布荷重による力のモーメントの合計は、荷重の大きさにO点からの距離を掛けたものを区間全体で足し合わせればよいから次のようになります。
\[ \displaystyle \int_{0}^{l} – \frac{w}{l} x \cdot x dx = – \frac{w}{l} \left[ \frac{x^3}{3} \right]_0^l = -\frac{wl^2}{3} \tag{5} \]
等変分布荷重の合力が作用する位置を、O点からL離れた位置と仮定すれば、バリニオンの定理より
\[ -\frac{wl}{2} L=-\frac{wl^2}{2} \]
となるから、
\[ L= \frac{2}{3}l \tag{6} \]
となります。等変分布荷重の合力と作用位置は、等変分布荷重全体を図形(三角形)としてみたとき、荷重の合力は(4)式より三角形の面積、作用位置は(6)式より図心となります。
一般の分布荷重
一般の分布荷重をw(x)と置けば、合力は分布荷重を区間全体で足し合わせればよいから、
\[ \displaystyle \int_{0}^{l} w(x) dx \tag{7} \]
となります。(7)式は分布荷重全体を図形としてみたときの面積そのものを表しています。
一般の分布荷重による力のモーメントの合計は、荷重の大きさにO点からの距離を掛けたものを区間全体で足し合わせればよいから次のようになります。
\[ \displaystyle \displaystyle \int_{0}^{l} w(x) \cdot x dx\tag{8} \]
一般の分布荷重の合力が作用する位置を、O点からL離れた位置と仮定すれば、バリニオンの定理より
\[ \displaystyle -L \cdot \int_{0}^{l} w(x) \cdot x dx=-\displaystyle \int_{0}^{l} w(x) dx \]
となるから、
\[ L= \frac{\displaystyle \int_{0}^{l} w(x) \cdot x dx} {\displaystyle \int_{0}^{l} w(x) dx} \tag{9} \]
となります。
(9)式は、断面一次モーメントの説明でいずれ書きますが、図心を求める式そのものになります。
おわりに
分布荷重の合力の大きさと作用位置を求めることは少々難しいかと思います。ただ、結果だけは覚えてください。